松本市の地震でクラックが入った土蔵に金属サイディングカバー工法
- 金属サイディングカバー工法
施工概要
- 施工内容
- 土蔵外壁サイディングカバー工法
- 使用材料
- 金属サイディング
KMEW株式会社 はる一番 - 工事期間
- 2週間
- 築年数
- 不明
- 保証年数
- 15年
- ご依頼のきっかけ
- 以前から何度もお世話になっていました。松本地震当時は崩れた瓦屋根を迅速に直していただきました。その後諸事情で外壁の工事を見て見ぬふりしていましたが、今回修理をしてもらおうと決心しました。 以前からお付き合いのある会社なので、丁寧な仕事ぶりはわかっていたのですが、古い土蔵なのでどのような工事をするのか興味半分心配半分でした。提案してもらったのが金属サイディングの重ね張り、デザイン機目から仕上がりが楽しみでしたが、きれいに直していただき満足しています
- 工事費(総額)
- 120万円
- 地域
- 塩尻市
松本市寿で土蔵の外壁を金属サイディング※で重ね葺きするカバー工法の工事を行いました。
2011年3月に起きた東北太平洋沖地震、その衝撃が冷め切らない同じ年の6月、松本市を中心に震度5強の大きな地震が発生しました。下から突き上げるような揺れで、屋根の瓦が軒並み落ちて、しばらくは松本市の瓦屋根の家はブルーシートで覆われていました。私たちもその対応に追われていたことを覚えています。
今回工事をしたこのお家も当時瓦補修をした1軒でした。屋根は直ったのですが、その時に入った外壁のヒビは落ち着いたら直しましょうということになったと思います。その後お施主様のご都合などで工事をしなかったのですが、今回外壁の補修工事を行うことになりました。
※金属サイディングとは
柄付けした金属板に断熱材を裏付けした外壁材
金属板は主にガルバリウム鋼板やステンレスを使います
ご覧のように大きなヒビがあちこちに入っていました。幸いその後大きな地震はなかったので、被害の拡大はしていないようです。ただ土壁なのでこのまま放置しているとだんだん崩れて、修復が難しくなってきます。これ以上被害が拡大しないうちに早急に直したほうがよさそうです。土壁は今は作れる職人さんが少くなくなってしまったので、土壁に直すのは困難です。
安全に作業をするため、効率よく作業をするために足場を架けます。工事費用の2割ほどが足場の費用です。工事が終われば解体してしまうものなのでもったいない気はしますが、安全確保のためにもご理解いただきたいです。
塗装をする場合は塗料の飛散防止にシートをかけますが、今回はサイディング工事なので周囲に飛ぶものはありません。3m以上のサイディングボードの取り回しにはシートはかえって邪魔なので、今回はシートはかけませんでした。
金属サイディングの下地になる胴縁(どうぶち)という角材を取り付けます。土蔵の壁は文字通り土でできています。その厚みは20cmほどあり、胴縁は土の向こうにある柱などにビス止めをします。ただ、通常のビスでは20cm以上奥の柱には届きません。そこで専用の土蔵改修用ビスを使います。270mmもある長いビスなので、これを使えば奥の柱にも届きます。1本50円~60円もする高価な材料ですが、しっかりした工事をするにはこういうところは惜しみません。
どんな工事にも下地や基礎は大切です。ここは材料選びから気を使って作業します。
胴縁(どうぶち)は幅105mm(10.5cm)厚さ18mm(1.8cm)の木材です。これを455mm(40.5cm)間隔に縦に取り付けていきます。
サイディングボードを土壁に直接貼り付けると、安定しないのもありますが、土壁とサイディングの間に入った水分が抜けるところがなく中でこもってしまいます。建物にとっては水は大敵です。この入った水分を逃がさなければなりません。そこで、胴縁の厚さ18mmが効いてきます。土壁から18mm離れてサイディングがくるので、18mmのすすきまができます。このすきまが水分を逃がす通気層になります。
胴縁の次は水切りとスタータの取り付けです。水切りは壁を伝ってきた水を壁側ではなく外側へ逃がすための建材です。写真左が水切りですが、ところどころ穴が開いています。胴縁で作った通気層を通ってこの水切りから排出させるための穴です。従って通気水切りと言います
スターターはコの字の金具で、ここにサイディング本体をはめ込んで張っていく最初の金具なので、スターターと言います。
サイディング本体の取り付けです。元々腰から下の黒と、上の白のツートンになっていたので今回も黒白の張り分けにしました。使用したサイディングはKMEW株式会社のはる一番、腰から下の黒は和風の土蔵にあう切石柄にしました。グリーかかった黒で元の色に近い色です。
腰から上は同じくはる一番のグロッシュを横張りしました。写真の矢印の柱は屋根の下地の垂木(たるき)という角材です。ここはサイディングを切り欠いて張りましたが、どうしても隙間ができてしまうので、隙間はコーキングで埋めて埃や虫が入らない処理りをしています。
垂木はいまは隠してしまう角材ですが、昔はこのように軒下に出す造りでした。隠すとすっきりとした軒下になりますが、この昔の造りのほうが重厚感があって私はこっちのほうが好きです。
足場が外れ工事が終わりました。和風建築の土蔵に現代の建材である金属サイディングを張りましたが、違和感なく出来上がったと思います。今後も長く使っていきたいというお施主様、金属サイディングはほぼメンテナンスフリーの建材なので、土蔵ともども長く使っていただけたらと思います。