新しくお家を建てられた際に、ハウスメーカーや工務店から10年くらい経ったら外壁塗装を考えてくださいというアドバイスをされた方も多いかと思います。または、外壁にひびが入ってきたとか、コケや藻が生えてきたとか、触ったらその手が真っ白になったとか、気になるところが出てきている方もいらっしゃると思います。一言で外壁塗装といっても大変奥が深い世界です。ただペンキを塗ればいいというわけにもいきません。
今回は外壁の種類とそれに適したメンテナンス方法をご紹介したいと思います。
窯業系サイディング
窯業系(ようぎょうけい)サイディングとは、板状の外壁材でセメントと繊維質を混ぜて窯(かま)で高熱処理したものです。色柄が豊富で現在の外壁の80%ほどのシェアがあります。
●窯業系サイディングの劣化状況
◆チョーキング◆
触ると外壁色に近い色の粉状の汚れが付く現象です。窯業系サイディングの塗膜の劣化のサインです
◆サイディングボードの痩せ、ズレ◆
昼夜、また年間の寒暖差でサイディングボードは伸縮します
◆ボード間のシーリングの劣化◆
ボードとボードのジョイント部分はシーリングというゴム状の材料で防水しています。上記のボードの動きにシーリング材がついていけず切れたり、剥がれたりしてしまいます。また、シーリング自体が紫外線などによって劣化し、ひび割れや剥がれが発生します。
◆塗膜の剥がれ◆
太陽からの紫外線による経年劣化、施工不良など、原因はいろいろ考えられますが、シーリングの劣化から雨水が入る水が原因の剥がれは注意が必要です。
◆サイディングボードの反り、ひび割れ◆
サイディングボードの厚さがないと起こる現象です。主に厚さ14mm以下の場合に起こります。14mmと15mmの間で工法が変わり、15mm以上の場合は金具工法で壁の内側から止めますが、14mm以下の場合は釘止めで外からくぎを打って止めます。この釘からひび割れすることが多いです。
◆コケや藻、カビ、色あせなど◆
日当たりが悪く、じめじめした北面に多く見られるのが苔、藻、カビです。また、主に南面や西面では紫外線による色あせなどがみられます
★窯業系サイディングのメンテナンス方法★
サイディングボードの厚さの確認と通気工法がとられているか否かを確認します。厚さが足りない(14mm以下)と塗り替えをしてもその後に反りなどの不具合が生じる可能性があります。通気工法とはサイディングボードとその中にある防水シートや木材との間に通気層がとられている工法です。通気があればなかに入った水分を逃がすことができますが、通気層がないとその水分を逃がすことができす、塗り替えても塗膜の剥がれや爆裂という現象が起きてしまいます。
ボードの厚みがあり、通気が取れていて、劣化症状が比較的軽症ならば塗り替えで十分です。ただし、塗り替えと合わせてシーリングのメンテナンスをお勧めします。
逆に厚みが足りず通気が取れていない場合はご予算次第で金属サイディングの重ね張りをお考えいただいてもいいかもしれません。
モルタル
モルタルとは構造用合板(厚さ12mmほどのベニヤ板)に防水紙、ラス網という金網を貼り、その上にセメントと砂利、水を混ぜたモルタルを左官作業で塗りつけた外壁で、窯業系サイディングが登場するまでの外壁材の主流でした。窯業系サイディングが工場で塗装をされたものに対して、モルタル外壁は現場塗装仕上げげになります。
●モルタル外壁の劣化状況
◆チョーキング◆
窯業系サイディングと同様にチョーキングが起きます
◆ひび割れ◆
モルタルで一番気になる劣化がひび割れだと思います。モルタルは乾燥して固まります。その際モルタル自体が縮むのでひび割れが起きることがあります。また、紫外線や地震などの揺れ、寒暖差なども原因の一つです。ひびの幅や深さによってはすぐにでも補修しなければならない場合もあります。目安はひびの幅が0.4mm以上、深さ0.5mm以上で補修の必要があります。この大きさになると雨水が入り込み、外壁内部から不具合が生じるためです。
◆苔、藻、カビの発生、色あせ◆
これらも窯業系サイディングと同様発生します。
★モルタルのメンテナンス方法★
大きな破損がなければ塗り替えでのメンテナンスでいいと思います。ひび(クラック)の補修は程度により、塗料の下塗り材を塗りこめばいい場合とシーリング材を注入しなければならない場合があります。
ALC
ALCとは簡単に言うと気泡がたくさん入った軽量コンクリートです。コンクリートの耐火性、耐久性は維持しつつ気泡を入れることで重量は約4分の1軽量になっています。断熱性も高く、長野県ではよく採用されている外壁材です。ただ、気泡が入っているので水分を吸収しやすいという弱点もあります。塗装をすることで防水しているので、定期的な塗り替えメンテナンスが必要です。
●ALCの劣化症状
◆チョーキング◆
ALCも例外なくチョーキングが発生します。
◆ひび割れ◆
コンクリートなのでひび割れも起こりますが、ALCボードの厚みが100mm以上あるので壁内部への雨水の進入は心配ありません。ただ、ALC自体に水が入ると不具合が生じますので注意が必要です。
◆シーリングの劣化◆
窯業系サイディングと同様ボード間にシーリングが打たれています。ボードへの塗装が現場塗装の場合が多いので、シーリングの上に塗料が乗ります。そのおかげでサイディングほど劣化はしませんが、定期的なメンテナンスは必要です。
★ALCのメンテナンス方法★
塗装で防水しているので定期的な塗り替えが前提になります。採用された塗料にもよりますが、塗料の耐候年数の目安通りに塗り替えることをお勧めします。同時に今のシーリングの上から新しいシーリングを打つ増し打ちも行ってください。
このメンテナンスを怠ると雨水が入り込み様々な悪さをします。重症になると窯業系サイディングと同様に金属サイディングなどの重ね張りや場合によっては張替えが必要ン位なる場合があります。
以上の3種類が長野県内でよく使われている外壁材です。
外壁の劣化の症状が重症になる前に早めにメンテナンスすることをお勧めします。重症になってしまってからでは費用も時間も余分にかかってしまいます。
重症になってしまった外壁たち
窯業系サイディング
水が入ってそれが凍って膨張し、中から外壁を壊す爆裂という現象